巷では「マグシールド」ばかり騒がれていますが、それに対し、全くと言っていいほど話題に上がらない『エアローター』。
取り立てて悪く言われていることもなく、「エアローターなので巻きが軽いです」といった評価をよく見かけます。
果たして、エアローターは本当に軽いのか。
今回はこの「エアローター」についての検証していきます。
■エアローター
「10 セルテート」に「マグシールド」とセットで採用され始めました。
マグシールドでワンウェイクラッチ回りを保護(防水)することにより、クラッチ回りを覆っているローターの肉抜きを実現しています。
また、特徴的なアーチ形状は強度の確保にも繋がっているようです。
エアローターについての詳細は以下のページを参照のこと。
・【DAIWA SWチーム】 「エアローターのメリット」
Fimoのダイワ公式ブログで、エアローターのメリットについてこう書かれています。
では、従来のゴツく重いローターの問題点を挙げてみましょう。
①自重がそもそも重くなる
②フロントヘビーになる⇒ローター自重分、リール前部が重くなる
③回転初動が遅くなる
④①②③に伴い感度が落ちるそれに対し、エアローターのメリットは・・・
①肉抜きしている分、自重が軽くなる
②肉抜きしている分、リール前部が軽くなる
③軽いから、ローター初動が軽くなる
④①②③に伴い感度が上がる
これらを踏まえて、計測した各ローターの重量をみていきます。
<注意>
ローター”単体”ではなく、ベールなどを含めたローター”一式”の重量データです。
厳密に言えばローター単体で量るべきなのですが、手放してしまったリールもあるので計測することができません。
付いている・入っているものは、基本同じなのでさほど影響はないはずです。
また、重量バランスのとれていることを前提に”重さ”のみをみていきます。
秤はキッチンスケール。
ラインローラー内のカラーをベアリングに交換しているのでその分の重量差もあり、大まかですが1グラム程度は誤差の範囲と思って下さい。
<各ローターの重量>
▼07 ルビアス 2004 ザイオン製ローター
ローター形状:従来型ローター
材質:ZAION
自重:約30g
▼15 フリームス 2004 DS4製エアローター
ローター形状:エアローター
材質:DS4
自重:約45g
▼13 セルテート 2004CH ザイオン製エアローター
ローター形状:エアローター
材質:ZAION
自重:約33g
DS5製エアローターの重量は不明ですが、おそらく40グラム前後でしょう。
該当機種:「14 カルディア」、「15 ルビアス」など
従来型のローターと、現行のエアローターの重量をみていきました。
さて、ゴツくて重いローターはどれでしょう?(笑)
比較対象が従来型で最軽量のZAION製ローターなので、特に下位モデルのDS4製エアローターは分が悪いですが、それにしてもDS4製のエアローターはとても軽いなんて言えないレベルです。
ダイワのいう従来のローターというのは、アルミ、エアメタル(マグネシウム)、ザイオンとあって、その中でも一番重いアルミ製ローターのことを言っているのでしょう。
ダイワに限らず、メーカーが 「従来より~」 と比較するときは概ね一番悪いデータと良いデータを使うものなのでしょう。
ローターの重量を測ってみて一番驚いたのが、最軽量と思われたザイオン製のエアローターでさえ、従来型ローターより重いこと。
「13 セルテート」で初のエアローターを手にし、興味本位でローターの重さを測ってみたところ、あまりの数値に目を疑いました。
従来型より軽いどころか、まさか重いなんて…。
エアローターには心底がっかりさせられました。
<材質によるエアローターの形状>
一口にエアローターといっても、材質だけでDS4、DS5、ZAIONの3つがあり、更に形状も年々改良されているようです。
よくよく見てみるとDS4系のエアローターは肉抜きこそされていますが、フレームは意外と肉厚です。
同じエアローターでも材質が違うだけでフレームの肉厚、肉抜き加減がかなり違います。
ザイオン製のエアローターは特にアーチ部分が薄く、肉抜き範囲も広めで如何にも軽そう。
それでも、剛性・強度は不明ですが、軽さだけなら従来型の方が上でした。
もはや見かけ倒しとしか言いようがありません。
エアローターのおかしなところはこれだけでなく、
更に、
ちなみに・・・
マグシールド非搭載のリールにエアローターを載せて釣りをするとどうなるか?答えはボディ内部に海水や異物が入り込み、一気に回転が低下し、寿命も短くなります。
自分でマグシールドありきのエアローターだといっているのに、マグシールドどころか、オイルシールドですらない「エクセラー」、「レブロス」に
エアローターが採用されています。
この整合性のなさ…。
<エアローターは従来型に比べて大きい?>
同番手で、同じZAION製でも従来型の方が軽かったのは、ボディサイズの変更に影響されているのかもしれません。
従来型ローターの「07 ルビアス」2004のサイズは、2000番のボディに2004番のスプール&ローターという組み合わせでした。
それが現行(マグシールド&エアローターが採用されたあたり?)から2000番(スプールサイズ)は2500番のボディとなりました。
これにより、スプールのサイズ(口径)こそ変わっていませんが、ボディと共にローターのサイズも多少変わったのかもしれません。
(基本的にローターのサイズはスプールに合わせているはずですが)
独特のアーチ状にするためか、従来型のローターより、やや横に大きくなったようにも見えます。
ボディサイズの違いもあり、同番手の「12 ルビアス」を初めて見た時の印象は「07 ルビアス」に比べて”大きいな”というものでした。
<ダイワ スピニングリールの強み>
ダイワのスピニングリールが評価されている理由の一つに巻きの軽さが挙げられます。
慣性の小さな軽量ローターによる巻きの軽さ、レスポンスの早さ。
これは後述のシマノとは正反対のコンセプトだったため、ライントラブルの少なさと相まって特に1000番、2000番クラスの小型スピニングを扱うライトゲーマーに人気を博しました。
<シマノのクイックレスポンスシリーズ>
ダイワのライバルであるシマノは、これまで重いローターによる “慣性を生かしたシルキーなフィーリング” をコンセプトにしてきました。
ローターの剛性不足によるドラグ力・精度の低下を懸念した開発陣と、高慣性によるシルキーな巻き心地を至高とする某釣具屋の店長の意向もあってか、シマノは長らく軽いローターのメリットにあまり着目していなかったようです。
それがユーザー・テスターの声、ダイワの軽いローターに影響を受けてか、ようやく軽いローターの開発に着手しました。
シマノも一応はCI4ローターという軽いローターを造ってはいましたが、本格的に軽量ローターによる低慣性コンセプトに着目し始めたのは、
2012年に登場した「ヴァンキッシュ」からです。
これに搭載されたのが、従来のCI4ローターを進化させた「マグナムライトローター」。
↑写真は12 アルテグラ
これが好評だったようで、以降レアニウムやアルテグラ、セフィア、ソアレ、カーディフと、さまざまなリールに採用されることとなりました。
参考までにマグナムライトローターの重量もみてみましょう。
▼シマノ 12 アルテグラ C2000HGS マグナムライトローター
材質:CI4+
自重:約31g
重量だけで言えば「07 ルビアス」のザイオン製ローターとほとんど変わりません。
恐ろしいのは、これがダイワでいうところのフリームスクラスに採用されていること。
ただし、「12 アルテグラ」はローターに力を入れている分、ボディはCI4より下位の高強度樹脂を採用しています。
「11 フリームス」はローターこそ強化樹脂のDS4製ですが、ボディはザイオン製でした。
2016年には、更なる軽量化が図られた「NEWマグナムライトローター」が生まれました。
発表されているものだと、「NEWヴァンキッシュ」、「ストラディック CI4+」に採用されています。
まだ何の発表もされていませんが、いずれ発売されるであろうNEWアルテグラにも同等のものを採用してくることでしょう。
軽量ローターの本家、ダイワも2016年に発売される「16 セルテート」に新型のザイオン製ローターを採用。
軽さ、強度共に従来のローターを上回るようなので、これでようやく “最軽量” を実現する模様です。
<まとめ>
・エアローター = 軽い という認識は誤り
・非ZAION製エアローターは”エア”ローターにあらず
単にエアローターといっても、”ZAION” か、 “そうでないもの” で大きく違い、ザイオン製でないものは “エアローター形状” というだけであって決して軽くはありません。
エアとは名ばかりで、肉抜きされた外観から “軽そうに見える” だけです。
ザイオン製エアローターなら、従来型のローターとほぼ互角といっていいでしょう。
巻きの軽さだけを求めるなら、マグシールド&エアローター搭載機より前のモデルの方がよほど優秀です。
実際に使ってみても、巻き心地(巻きの滑らかさ)は現行品が上ですが、巻き(初動)の軽さだけなら従来の「07 ルビアス」の方が格段に上でした。※
現行のダイワ製スピニングがシマノのシルキーな巻き心地に近くなったのは、”軽くない” エアローターによるものかもしれません。
※ZAION製エアローターを採用した「13 セルテート」はハイギヤを選択したため、巻きの軽さは比較できません。
好意的に捉えて、これまでのエアローターはまだ進化の過程なのでしょう。
反対に悪意に満ちた捉え方をすると、マグシールドの副産物で生まれたらしいエアローターは、マグシールドを強調させたい、いかにもな肉抜きで軽そうに見せかけたいとしか思えないものです。
以上、素人によるエアローターの検証でした。
理系な突っ込みはなしでお願いします。
私は基本的にダイワ派ですが、マグシールドより、このエアローターのせいでなかなか現行機種を買う気になれません。